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ベトナム外資企業の経理:内製 vs 外注(会計事務所・BPO)

ベトナム外資企業の経理  内製vs外注

はじめに

ベトナム外資企業の経理では、大きく 「内製(自社で経理を持つ)」 と 「外注(会計事務所・BPO(経理アウトソーシング)へ委託)」 に分かれます。どちらが正解という話ではなく、会社のフェーズ・取引の複雑さなどによって、合理的な選択が変わります。

本稿は、これからベトナム拠点を立ち上げる管理者、または経理体制の見直しを検討している管理者の方にとって判断の参考になればと思います。

なお本稿では、内製=社内で経理(記帳・税務申告・決算・監査対応)を回すこと、外注=会計事務所等に経理・税務を委託することとして整理します。

第1章:内製か外注かに関わらず押さえるべき前提

結論から言うと、ベトナムでは「内製/外注」いずれも選択肢になり得ます。ただし、最低限押さえるべき前提があります。

1) 外資企業は年次監査が前提になる

外資企業は、原則として年次財務諸表の監査が求められます。 そのため、内製・外注にかかわらず監査対応は必ず発生します。

2) 年次財務諸表の提出期限(期末後3か月)を意識した設計が必要

外資企業の監査済み年次財務諸表の提出および法人税申告納税は、期末後3か月以内が期限です。 つまり、体制をどう組むにせよ、期末決算→監査→提出・納税のタイムラインに耐える運用設計が重要です。

3) チーフアカウンタントの考え方

ベトナムの企業はチーフアカウンタントを任命・登録する義務があります。ここで「必ず社内にチーフアカウンタント資格者を採用しなければならない」と考えてしまいがちですが、会計事務所に外部委託することも法令上認められており、実務上も一般的です。その際、会計事務所は財務諸表作成の業務代行とセットで引き受けることが多く、一般的にはチーフアカウンタント単体では受けない点に注意が必要です。なお、チーフアカウンタントの採用・管理に関しては、別記事でも整理しています。

4) 外注の業務範囲

外注の対象になりやすいのは、一般的に 記帳・各種税金計算・決算・監査準備です。一方で、ベトナムでは税務調査で指摘を受けないよう、証憑(各種書類)やVATインボイスの管理が非常に重要です。これらの管理整備は外注の範囲外になることも多いため、社内で日頃から回収・保管・ルール化を徹底することが求められます。

5) 不定期に発生する業務の外注は要注意

月次記帳や法人税・付加価値税(VAT)・個人所得税の申告など、スケジュールが決まっている業務は定型化しやすく外注もしやすいです。一方で、突発的に発生する業務は外注時に注意が必要です。たとえば、外国契約者税(FCT)という税金がありますが、これは簡単に言うとベトナム国外へのサービス代金支払いに対して発生する税金です。外資企業では親会社・国外ベンダーとの契約(ロイヤルティ、技術支援、据付、研修、出向等)で論点になりやすいです。FCTは原則定期的な申告・納税ではなく、送金日から10日以内に申告・納税となります。FCT業務を外注している場合、FCTが発生する取引を事前に伝えておかないと、申告・納税遅延や漏れに繋がるため注意が必要です。

第2章:内製が向いているケース

内製が合いやすいのは、「現場の判断が多い」「本社・グループからの要請が重い」「業務が複雑」タイプです。

  • 取引量が増え、月次を早く締めたい/管理会計が必要
  • 原価・在庫・製造など、会計処理が現場オペレーションと密接
  • 税務論点が多く、資料作成・当局説明が頻繁
  • 内部統制や不正リスクの観点から、権限設計・牽制が必要
  • 将来的に人員を増やして「経理機能を組織化」したい
  • 経理を“将来の管理機能”の軸として育てたい(財務分析、原価、内部統制、経営管理など)

第3章:外注が向いているケース

外注が合いやすいのは、ざっくり申し上げると 「スピード優先」「固定費を抑えたい」「まだ仕組みが固まっていない」ような会社です。

  • 立上げ期/小規模(取引量が少ない、意思決定が速い)
  • まずは法定対応(申告・決算・監査対応)を「落とさない」ことが最優先
  • 経理人材の採用が難しい(日本語対応、採用が難しい地域など)
  • グループとしてはシンプル運用で良い(本社向けレポートが軽いなど)
  • 固定費(人件費)を抑え、業務量に応じて調整したい
  • 退職や休業など、体制が不安定になる要素を減らしたい

ただし、外注は「完全丸投げ」が成立しにくいことに気を付けるべき点です。外注先との最低限の社内窓口(総務担当者など)が必要になりますし、外注先によって依頼できる業務範囲も異なるため、どこまでを外注できるか事前に外注先と確認しておくべきです。

第4章:内製と外注の比較表

以下は内製と外注の比較表で、一般的なケースを基にしています。担当者や外注先によって実際は変わる点もありますので、あくまで参考としてご覧ください。

比較軸 内製 外注
立ち上げの早さ 採用・引継ぎが必要で時間がかかる すぐ始めやすい
月次の締め(スピード) 社内で調整でき、早くしやすい 外注先の対応速度・契約範囲に左右される
コストの形 人件費 (採用・教育費を含む) 業務委託費
コストの予測しやすさ 予測しやすい 追加依頼や取引量が増えると膨らみやすい
業務範囲の柔軟さ 追加依頼や突発対応をしやすい 契約外は追加費用・追加工数になりやすい
現場との連携(証憑回収・不明点の確認など) その場で確認でき回しやすい やりとり(依頼・確認)が増えやすい
ルール作り・業務改善 社内で作って定着させやすい 外注先の型に乗るが、自社の定着は工夫が必要
ミスの見つけやすさ 日々の動きが見えるので気づきやすい 見えづらく、発見が遅れることがある
チェック体制(ミス防止) 役割分担を作りやすい(複数人なら強い) 外注先側の体制次第。範囲外は穴になりやすい
税務調査・監査の準備 主導しやすい(資料の所在が明確) 対応は可能だが、受け身になりやすい
本社向け資料(報告) 目的に合わせて作りやすい 追加対応になりやすい(費用・時間が増える)
情報の扱い 社内完結で管理しやすい 外部共有が前提。アクセス管理が重要
ノウハウの蓄積 会社に残りやすい(人が育つ) 外注先に残りやすい(社内に残しにくい)
継続性(引継ぎのしやすさ) 退職があると引継ぎ負担が大きい 担当交代で品質がぶれることがある
人材リスク 退職・採用難の影響を受ける 担当者変更・品質差の影響を受ける
事業拡大への強さ 人を増やして体制化しやすい 委託範囲を増やして対応(管理工数は増えがち)
向いているフェーズ 取引増・複雑化/統制や分析を強めたい 立上げ期/小規模/取引が比較的単純

実際のところ、内製と外注を組み合わせているケースも多いです。たとえば、ベトナムの法令上必要な会計・税務業務は外注し、本社向け資料は自社で対応するケースはよく見られます。

また、移転価格文書作成やグルーバル・ミニマム課税など比較的新しいトピックは対応できる人材も限られ、先行事例も少ないことから、スポットで外注することが多い印象です。

おわりに

ベトナムの経理体制は「内製が正解/外注が安全」とは言い切れず、会社のフェーズや取引の複雑さ、本社要請によって最適解が変わります。

比較表も活用しながら、自社で大切にしたい点(スピード、コスト、リスク、チェック体制など)を、検討中の外注先または経理担当候補者で満たせそうか確認していくことが実務的です。

本稿が貴社に合う現実的な体制づくりの一助になれば幸いです。

よくある質問(FAQ)

Q1. 外注すれば税務リスクはなくなりますか?

外注しても、会社側で把握しておくべき論点(証憑管理、契約内容、移転価格など)は残ります。外注先に共有すべき情報を整理することが大切です。

Q2. ベトナムで経理担当を採用する場合、最初に見るべきポイントは?

「外資企業での経験」「税務当局とのやりとり」「同業種での経験」など、実務の再現性を確認するとミスマッチが減ります。

Q3. 外注から内製へ切り替えるタイミングは?

取引量が増えて月次を早く締めたい、在庫管理・原価計算など現場との連携が増えた、本社向け資料が重くなったといったタイミングで、内製(またはハイブリッドへの移行)を検討する会社が多いです。

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この記事の著者

Accounting Works 編集部

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